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『モモ』みたいな素敵な聴き手に…

 

 

バイオグラフィーワークに最初に出会った30代の初めから、早くも20年以上になります。

 

最初の頃は、自分の人生の羅針盤が欲しいという気持ちが強く、ワークを味わうというよりも、「自分の人生を少しでも理解したい。次のステップを具体的に知りたい」という焦りの中で、一生懸命ワークに取り組んでいました。

 

ところが、一緒に学んでいる仲間の豊かな人生を共有してもらう中で、次第に自分の人生まで豊かになっていく経験をしました。また、自分の経験を語る中で、それまで自分でも気がついていなかった出来事の奥にある意味に、ふと気づかされることもありました。

 

ただ自分ひとりで自分の人生を振り返っていても、同じ気づきには至らなかっただろうなということを、今では時間を共有していただいた仲間への感謝とともに確信しています。むろんその“仲間”に含まれるのは、人間存在だけではなく、ワークの場所を取り巻いている環境や、植物観察の対象である植物存在、そしてアートワークの素材─クレヨンや絵の具や粘土(プラスタシン)など多様です。

 

最初はワークの参加者として、そして次第に、ワークの場所を提供するワークショップの開催者として、このような経験を繰り返していく中で、いつしかこのワークの魅力にどっぷりと浸かっていました。今では、バイオグラフィーワークは、自分の人生にとって欠くことのできない一要素になっています。それとともに、ワークをする中で、時間を経ることで作り出されてきた仲間の人たちとのつながりというのも、私にとってはかけがえのない宝物でもあります。

 

さて、50代に入った今、人生の中でまだ何も達成できていないという焦りの気持ちもなくはないですが、それでも、日々人生を丁寧に生きようと努力していられるのは、人生の先を進んでいる仲間であり先輩たちの生きる姿勢や、その年齢を重ねたところから生じる、人生をより深く見る力を惜しみなく分け与えてくれることが大きいと思います。

 

これからの目標、というと大げさですが、バイオグラフィーワークを重ねることで、ミヒャエル・エンデの物語『モモ』の主人公のモモみたいな素敵な聴き手になれたらいいなと思いながら、ワークに取り組んでいる今日この頃です。

 

 

 

“光を見るためには目があり、音を聞くためには耳があるのとおなじに、

人間には時間を感じとるために心というものがある。

そして、もしその心が時間を感じ取らないようなときには、

その時間はないもおなじだ。”

〜ミヒャエル・エンデ『モモ』より引用〜

 

(vol.3▶寺尾 昭彦/関東/1期・2期

 

※次回は、泉 恭子さん(関東/9期)のリレーコラムです。どうぞお楽しみに。