2020年4月以来、だれかと実際に会って語り合う時間を、私たちはそれまでよりかなり意識的に体験しているのではないかと思います。Covid-19の感染拡大で人と人との物理的距離を遠ざけるしかなくなって、もう2年。バイオグラフィーワークについてもオンラインでの試みが増え、私も昨年8月に11人でのオンラインワークに参加しました。それぞれが描いた絵やつくった像を見せながら話し、それなりに意味深いワークになりました。遠く離れていても、何かの理由で移動が困難でも参加できるオンラインワークは、これから重要な選択肢のひとつになっていくと思います。しかしその4カ月後、感染者数が減っていた京都で、感染対策をとりながら同じメンバーが一堂に会してワークしたときの胸の高鳴りは、「こうでなくっちゃ」と伝えてきました。そのことの意味に、今とても意識的になっています。
ワークのプロセスのなかで、私が大切に感じるところが3つあります。ひとつめは、メモリーワークのテーマにそって記憶をたどり、ある体験が意識から浮かびあがる瞬間。つぎに、体験をシェアしあったほかの人の語りに触発されて、自分の体験がそれまでと違う角度で見えてくるとき。そして、何人かが輪になり、心をその場に集め、ことばが発せられる前に一瞬しんとする、その瞬間。そんな場でことばにされた体験は、ことばを超えるものによって聴き届けられるような気がします。
バイオグラフィーワークを学びはじめて17年、ワークのたびに新たな気づきがありますが、今ほど「あなた」と「わたし」がその場にまるごと居ていっしょにワークできることのかけがえなさを感じたことはなかったかもしれません。
(vol.6▶諫早 道子/関西/3期)
※次回は、八尋美千代さん(関西/4期)のリレーコラムです。どうぞお楽しみに。