バイオグラフィーワークに出会って17年。ワークを体験する度に一人一人の人生の尊さ、かけがえのなさを感じています。そしてワークによって何かが動き出す不思議さもたくさん経験してきました。
中でも一番驚いたこと。それは記憶の始まりの頃の、ずっと心に封印していた出来事を振り返った時のことでした。信頼できる温かい場に支えられて、意外にも冷静に客観視できました。その出来事の捉え方が変わり、それまでの苦しさはなくなっていました。
しばらくして、母が何気ない会話の中で唐突に、「あの時はかわいそうなことをしたね」と言ったのです。紛れもなく私が振り返ったあの場面でした。言葉を失うくらい驚きました。母も覚えていた、しかもずっと心の傷として抱えていたなんて。当時の母の魂に触れた気がしました。私はあの時の絶望に近い孤独と恐怖がずっとトラウマになっていたことは言えませんでした。母の立場で「小さな妹がいて大変だったよね」と言えた時、心が軽くなっていました。
母の自責の念と私の淋しさ、双方が無意識の底にずっと抱えていた出来事が、再び二人の話題にのぼるなんて。まるで50年以上の歳月をこえて封印していた箱が開かれ、昇華したようでした。バイオグラフィーワークで人生を振り返ることは、私だけでなくそこに関わった人たちにも働きかけている。バイオグラフィーワークには、そんなつながりの力を感じます。
過去は変わる。個人的に実感しています。過去が現在を作り、現在が未来を照らすからこそ、バイオグラフィーワークの深い叡智をこれからも多くの方々と共感していきたいと思います。
バイオグラフィーワークに出会えたことに、心から感謝しながら。
(vol.15▶中西 由加/東海/9期)
※次回は、藤原 佳子さん(東海/9期)のリレーコラムです。どうぞお楽しみに。